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「情景をイメージするのを止めて、リラックスしよう」と叫んだジョセフ・ウォルピ [心理学]

20世紀前半を通して、心理療法はフロイトの精神分析に席巻されていた。

これは、不安は魂の奥深くにある諸々の力の葛藤から生じると主張する立場であった。

この葛藤は、個人の意識的及び下意識的思考双方及びそれらを形成した諸経験の長期に亙る内省的分析を通じてのみ軽減され得る。


だが、南アフリカ出身の精神科医ジョセフ・ウォルピは、第二次世界大戦中のPTSD(心的外傷後ストレス障害、当時は「戦争神経症」と呼ばれていた)による不安で悩む兵士達の治療に当る中で、精神分析に基く療法が自分の患者達を助けるのに何の役にも立たない事に気付いた。

この兵士達に自身の経験について語らせて見た所で、元々のトラウマに対する彼らのフラッシュバックを止める事も、彼らの不安を一掃することもできなかったのだ。

ウォルピは強度の不安の問題に取組むには精神分析よりもずっとシンプルで近道な方法があるに違いないと考えた。


ウォルピが思い至ったのは、イヴァン・パヴロフやジョン・B・ワトソンと言った行動主義者の業績であった。

これらの人々は、刺激━反応の訓練ないし古典的条件づけを通じて、新しい行動パターンを動物や子供達に教え込むことに成功していた。

詰り彼らは、ある対象なり出来事に対して、以前には感じられていなかった情動的反応を自動的なものにする事に成功していたのだ。

ウォルピは、もし行動がこんな風に学ばれるのであれば、学習なされないようにすることも可能なのではないかと考えて、この手法を酷いショックを受けた戦争古参兵に用いる方法を考案したのだ。


ウォルピが発見したのは、人間には同時に2つの相矛盾する情動状態を経験する事は出来ない事であった。

例えば、とてもリラックスした気分でいる時に、どんな種類であれ激しい不安を覚える事はありえない。

これにヒントを得て、ウォルピは患者に深い筋弛緩技法を教授し、更にこれを後に「逆制止法」として知られたある種の不安誘導刺激の同時的な提示と対にしてみた。


ウォルピの患者達は、先ず混乱を引起すように感じられる対象なり出来事をイメージするよう求められる。

もし、それによって不安を覚えるなら、「情景をイメージするのを止めて、リラックスしよう」と励まされる。

患者の恐怖心は、この手法によって段々と締め出され、患者は、以前は自身の経験によって悍ましい記憶が思い起こされる時には不安を感じてしまうように条件づけられていたのに対して、今や自身のそうした不安を、全面的にリラックスしていると言う、不安とは真逆の感情の方に注意を集中する事で━ごく短時間で━シャットアウトしてしまうように条件づけられている。


ウォルピの逆制止法は、患者の過去の分析等全くせずに、専ら症状とごく近い行動だけに焦点を当てる事で、脳を再条件下する事に成功した。

この手法は効果的であるばかりでなく、、直に効果を齎す物でもあった為、行動療法の領域に数多くの新しく重要な技法を齎した。

ウォルピ自身は、この手法を発展させて系統的脱感作プログラムを作り出し、鼠嫌いや飛行機嫌いといった恐怖症の治療に当たり、今尚この手法は広範に活用されている。

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